1DK 開発ストーリー #1 「 構想 」

 

 “ I don't know ” から始まる新たな発見と革新の出発点

2023年末に“個性を惹き立てる”をコンセプトにリリースとなった「 1DK 」 。本記事では発売までの誕生背景を、ブランドを牽引する株式会社pad代表 廣田へのインタビューでご紹介します。今回はブランドが形を形成していく様子をテーマにした「構想」編です。

 

―ブランドを立ち上げるきっかけになる出来事があったそうですね?

前職の美容メーカーで15年間商品開発を色々としてきたのですが、40歳を目前とした時に今後の人生について考え始め、自分自身でどこまでできるのか、もっとワクワクする商品を作りたいと考えるようになりました。

国内商品で自身が思い描くデザイン、クリエイティブ、中身でプロダクトを形にしたいという想いが日に日に高まり、独立をすることが大きなきっかけになりました。

  

―ゼロからブランドを生み出す要因はブランドによって様々だと思います。1DKはどのような要因からでしょうか?

まずプロダクトを生み出すためにコンセプトや方向性、1つのブランドとしてどうなっていきたいのか、未来像を考えていきました。

描いた未来像は、世界的に人々が抱える課題に髪を通してどこまで深く関われるかということでした。

課題は様々ありますががフォーカスを当てたのは“多様性”です。

多様性とは「一人ひとりの個を尊重し、様々な価値観を共有していく」こと。

もっとシンプルに捉えると個性を受け入れ、受け入れられることなんじゃないかなと。

個性の表現方法は様々で、思想では考え方や在り方、見た目ではファッションやヘアスタイルなどを通して表現される方が多くいらっしゃいますが、自身が髪と深く関わる人生を歩んできたので、髪を通じて個性表現をより豊かにしていきたいと思えたことはごく自然なことだったように感じています。

自分らしさを表現し、その個性を認め合う循環はポジティブな考えや行動を引き起こすと理解しているからこそ、ヘアスタイルを通じた個性表現に必要なプロダクトを生み出し、そこに共感して頂けるものとして形にすることが、ブランドの目指している未来像にほんの少し近づけることなのではないかと考えました。

硬くなりましたが、髪の個性表現をより豊かにし、多様性の可能性が広がっていくことに少しでも貢献していけたらと思っています。

 

 

―頭髪化粧品ではヘアケア商品でブランドデビューされる事が多いイメージがあるのですが、スタイリング剤でブランドデビューをした理由はあるのでしょうか?

スタイリング剤は飽和状態であり、非常に繊細なカテゴリであることは理解していたのですが、自身の境遇を活かして多くの美容師の皆様の意見を緻密に反映し、これまでにない時代性に寄り添ったプロダクトを生み出したいと思っていました。

髪で個性表現をより豊かにしていくブランドを目指す上で、スタイリング剤以外をファーストチョイスにする事は考えられなかったのもあるんですけどね笑

誰にでも隔たりなく使って頂ける事、自身が癖毛なので広がりを落ち着かせられたり、もっとパーマスタイルを活かしたり、気分やシーンで切り替えれるようなものだったり…様々な思考を凝らし、なりたい自分のお手伝いが出来るプロダクトを目指して形にしていきました。

 

―1DKは美容室専売品ですよね?美容室専売品はお客様が購入する際に、美容室でしか買えないという限定的な場所になってしまうと思うのですが、なぜそのような選択をしたのでしょうか?

現在はSNSなどで自分らしさの可能性を広げるためのツールがありふれていますが、“髪”においてはクセや髪質、髪の状態、その方の気持ちまで判断された上でご提案される美容師の皆様からのアドバイス以上に優れているものは無いんじゃ無いかなと思っています。

その人に合ったスタイルを信頼できる美容師の皆様が作って頂き、そのスタイルに対して的確なアドバイスをして頂く。そうすることによって、より豊かな自分らしさが表現できると思っています。

そのような理由から、美容室専売品以外の選択肢は考えられませんでした。 

 

―なるほど。それでは、商品の深掘りをさせてください。1DKという名前は物件の間取りをついつい想起してしまうのですが笑 ブランド名の由来はあるのですか?

そうですよね。笑

でも、ちゃんと想いと意味を込めています。

【個性を尊重した美容専売ブランド】という方向性を軸に、ネーミングを考えていきました。

デザインと並行して考えを進めたネーミングでしたが、なかなか良いアイデアが浮かばず、これだ!と考えついた名前が商標を取られてしまっていたり。

ぼんやりと浮かぶイメージを形にするためにスケッチを描くなどを繰り返しました。

 

そんな中、海外の友人とメールをする機会があり、メッセージのやり取りの中で「IDK」という表現がありました。

これは、"I don`t know”の感情を表す表現で、日本語では「分からない」「知らない」といったネガティブな言葉でしたが、この感情は決してそういった意味だけではなく、個人的にその時の感情と一致して前向きに捉えると、わからない事からの出発点、そこから何かが生み出されるような 新たな感情ではないかと感じました。 

このブランドを通じて、ユーザーの皆様が前向きに、一歩踏み出したくなるような気持ちになれたらという想いと、大枠で決めていたコンセプトの“唯一”の個性を尊重する意味を込めて一人称の「 I 」を 「1」に変えて1DKをブランド名にする事にしました。

構想から1DKを発売するまでの約1年間で、数え切れないほどの “ I don`t know ”と直面したことは、この名前にしたことが引き起こした宿命だったのかもしれません。笑

何度も心が折れかけたのですが、乗り越えた数だけ1DKがお客様に喜んでいただけるプロダクトに近づけられていたのでは?と今では思えています。

 

ー容器やデザインに取り入れたこだわりは何かありますか?

デザインもコンセプトに沿って、何色って言葉で表現できない色味がいいなと思い、約2000色の色見本の中から、微妙な色加減を何度も印刷しては夜遅くまで仲間たちと話し合い、今の色を探して出して決まりました。

前に持ってきているバーコードも商品によって縦や横、向きが違うのは話し合いの中から、 それも個性だね。という事でそれぞれの商品にあわせて配置しています。

デザインはバランスを大事にし、ちょっとした差を何度もあーでもない、こーでもないと、模索して、客観視できるよう一旦数日おいてみるなど、いらないものは削ぎ落として最小で最大のデザインに仕上げられたと思っています。

シールの質感もつるっとしたマット調のシールで液が垂れても滲まない加工を採用してます。商品裏面に記載したベジタブルインキマークは、植物油を含有した環境負担を大幅に低減できるインクを採用している意味を持っています。

 

-ブランドサイトもアイデアやレイアウトなどを自社で構築していったということですが、どのような点にこだわったのでしょうか?

販売方法で考えていたのが、発注や発信などをもっとDX化したいという思いがありました。 ブランドサイトは完成まで本当に苦労しましたが、メゾンブランドでファッションの買い物をするように美容師の皆様がワクワクするようなサイト作りを目指しました。

たくさんのブランドサイトを参考に購入するまでの流れや仕組み、決済方法を調査して何度もテストの繰り返しを行いました。サイトトップのクリエイティブは前職でお世話になった美容師の方にお願いしてスタイルを作って頂きました。

また、こだわりはサイト内にあるデジタルスタイルカタログで、実際に1DKを使用し、1DKのスタイルにあったインスタグラムの投稿を、指定されたハッシュタグで引っ張ってこれるように構築してあります。

美容師の皆様や一般のお客様にご覧いただいた際に、スタイリングや質感の参考になるようなリアルでオンタイムな形を楽しんで頂けると思います。

 

―構想編のインタビューは以上になりますが、最後に何かありますか?

自社のブランドサイトだけでの周知はなかなか難しいところもあります、 それよりも僕たちのブランドに共感して使って頂ける美容師の皆様や、その先のお客様に喜んで頂ければいいなと思っています。

 

続いて#2 ではブランドの中身について切り込んでいきたいと思います。

次回#2は2月中の掲載を予定しております。

 

廣田 雅人 / Masato Hirota
美容室専売メーカーで15年間勤務する。営業の傍ら、商品の企画開発責任者として5つのブランド立ち上げ、250以上の商品をマネージメントする。ブランドのネーミング、商品テスト、マーケティング、企画などの主要業務をプロデューサーの立場で取り組み、代表ブランドは国内のあらゆる媒体で受賞すると共に、代表商品は某コスメアワードにて2018年より3年連続グランプリを受賞し殿堂入り商品となる。多角的な視点と様々な経験を強みに、美容業界で新たな挑戦を志し2022年に株式会社padを設立する。